みなさんのイメージする"デッキシューズ"とは?
デッキシューズのイメージとは?と聞かれると、多くの人が、革ひもが履き口の周りをまわっているモカシンレザーのシューズを思い浮かべるのではないでしょうか?確かにそれもデッキシューズなのですが、それだけじゃないんです。全く同じモカシンレザーのデザインでも、デッキシューズと呼べないシューズもあります。全然モカシンでもなければレザーでもないデッキシューズもあります。じゃあいったい"デッキシューズ"ってどんな靴なんでしょうか?
"デッキシューズ"ってなに?
デッキシューズとは、ヨットやボートなど船の甲板(デッキ)で使用するためのシューズです。ボートシューズと呼ばれることもあります。
船乗りの命を守るアイテム
デッキシューズには、水に濡れた甲板でも滑らないように様々な工夫がされています。甲板で足を滑らすことは落水の恐れがあり、命を落とす危険性もあります。実際、世界的なセイラーの中にも落水で命を落とした人が数多くいます。ライフジャケットなどと同様に、まさに「船乗りの命を守るアイテム」なのです。
デッキシューズの工夫
デッキシューズと一般のシューズの最大の違いはそのアウトソールにあります。
ソールとデッキの間にある水を効率よく排出することで、乾いた状態と変わらないグリップ力を発揮するように、アウトソールには切れ込みや波形が刻まれています。
よく例えられるのが、自動車のタイヤ。タイヤの溝もタイヤと路面の間の水を排出してグリップ力を発揮するために刻まれています。逆にF1などのレーシングタイヤには溝がないため、少しの雨でもスリップしてスピンしてしまいます。
F1のレイン(雨用)タイヤの溝を参考に開発されたデュバリーのソールパターン
デッキソールで最も有名なのが「スペリーソール」ですね。
自身セイラーでもあったポール・スペリーは、氷上(凍結した路面という説もあるようです)を走り回る愛犬の姿からインスピレーションを得て、「スペリーソール」を開発。1935年のことです。
その後、自らのブランド「トップサイダー」だけではなく、多くのブランドがデッキシューズに採用するソールとなりました。
グリップ時に細かい波形の溝が現れるポール・スペリーが開発したスペリーソール。
アウトソールで見落とされがちなのが、ラバーの柔らかさです。デッキシューズのソールに使われるラバーは、一般のシューズに比べてはるかに柔らかいものが使われます。
言うまでもなくグリップ力を高めるためです。どれほど優れたソールパターンを持っていても、固いラバーのソールではグリップしてはくれません。ソールパターンよりも大切なのがソールの柔らかさなのです。その反面、柔らかいソールはアスファルトなどの上では減りが早くなってしまいます。あくまでも「デッキ」上で最大限に性能を発揮するように作られているのが"デッキシューズ"なのです。
アッパーには、レザー・キャンバス・ナイロンなど様々なものが使われます。この点は一般のシューズとは変わりありませんが、デッキシューズならではの工夫も見られます。
レザーのデッキシューズには古くから「オイルドレザー」が使われます。オイルドレザーは動物油でなめしたレザーで、その油による撥水効果で革が水を吸って重くなることを防ぎ、また水分による革の劣化を抑える効果があります。ただし、油分は徐々に抜けてしまいますので、適度に油分を補う必要があります。